1学期終業式も終わり、学校は夏休みに入った。この日記もついに50号を迎えることとなった。この1学期、本校に赴任以来とてもうれしい出来事があった。終業式でも生徒に話したのだが、5月半ば、学校に一本の電話がかかってきた。世界遺産バスを運行しているバス会社からで、本校の生徒がバスの乗客(たぶん五箇山観光帰りの乗客)に座席を譲ってくれたという。その乗客がぜひ生徒や学校にお礼が言いたいとバス会社に申し出、バス会社から学校に連絡があったという次第である。

 その生徒は学校帰りに世界遺産バスに乗ったと思われる。一度自分が座った席を、立っている見ず知らずの乗客に譲るという行為はなかなかできるものではない。本校にこのようなことがさりげなくできる生徒がいたことに胸が熱くなった。自分のことだけでなく周りの人への気遣いができる、そんなやさしい生徒が一人でも多く育ってほしいものだ。

 そう言えば、今月の初め、富山市内の帰宅中の中学生4人が、用水路で流されている男の子(8歳)を発見。周囲に大声で呼びかけ、通りがかった大人の男性が飛び込んで男の子を救助したというニュースを耳にした。集まった人達で人工呼吸をしたところ、男の子は無事息を吹き返したとのこと。この時の中学生らのとった行動がとても迅速かつ的確だったため、大切なひとつの命が救われた。

 救助に貢献した中学生のコメントの中に、「何とか助けなければと思った」「体が勝手に動いてよかった」というものがあった。学校で教えなければならないことは何も勉強だけではない。人の命の大切さや人へのやさしさ、そして、思ったことを行動に移す勇気などなど。4月当初、「大人とは何か」を生徒に問いかけたが、席を譲ってくれた生徒や男の子の救助にあたった中学生こそ「大人」と呼ぶに相応しいと私は思うのである。