この時期になると、ふと思い出すテレビドラマがある。1996(平成8)年に放送されていた「白線流し」(主演:長瀬智也・酒井美紀)というドラマだ。そしてこのドラマの主題歌が『空も飛べるはず』(スピッツ)だった。当時、私は異動で学校現場を離れ、第10回国民文化祭富山県実行委員会事務局というところで、半年後に迫った県の全国イベント(国民体育大会の文化版のようなもの)の準備の仕事をしていた。卒業を間近にした高校3年生の男女7人の友情や恋愛模様を描いたこのドラマを見るにつけ、無性に学校が恋しく、早くイベントが終わり現場に戻りたくて仕方なかった記憶がある。

 そもそも「白線流し」というのは、岐阜県高山市の旧制斐太(ひだ)中学(現在は岐阜県立斐太高校)で長年にわたって行われてきた卒業式直後の「儀式」だ。もとは、男子卒業生が自分の学生帽の白線を川に流したのが始まりだそうだが、その後男女共学となり、卒業生男女が互いの白線とセーラー服のスカーフを結んで川に流すようになり、今日に受け継がれている。

 昨秋、用事で高山に出かけたとき、立ち寄った店で、20代後半と思われる女性と話をする機会があった。偶然「白線流し」の話題となり、彼女は、実は自分は斐太高校の卒業生で、どうしても「白線流し」をやりたかったから、斐太高校を受験し進学したのだと話してくれた。そして、自身の高校卒業の日のことを今でも鮮明に憶えているという。新入生が「これをやりたいから南砺平高校に来ました」と言ってくれるような魅力あふれる高校にしなければという思いを新たにした瞬間でもあった。

 わが南砺平高校でも、かつて卒業式後の門送りの際、学校そばの庄川に架かる平橋を渡っていく卒業生と校舎に残る在校生らでエール交換をするという「儀式」が行われていたと聞いた。車の通行の妨げなどの問題もあり、数年前にとりやめになったらしい。今は、コロナの感染拡大が危惧される状況だが、卒業式が無事行われることを祈るばかりである。