私が小学生の頃、よく見ていたテレビアニメがある。『はじめ人間ギャートルズ』(原作:園山俊二)という番組である。このアニメは、原始時代を舞台とし、大変シュールで、子ども向けアニメの中では独特な世界観をもっていた。当時、『ど根性ガエル』『アタックNo.1』『巨人の星』『アルプスの少女ハイジ』『マジンガーZ』『ゲゲゲの鬼太郎』など人気アニメは数多くあったが、自分としては『はじめ人間ギャートルズ』の印象があまりにも強烈だ。

 主人公はゴンという10歳ぐらいの少年で、ゴンとその家族、ゴンの相棒・類人猿のドテチンらが繰り広げる原始時代における人間たちの日常生活を描いたものだ。叫び声が文字の形の石になって飛んでいったり、美味そうな輪切りのマンモス肉や巨大な石のお金が出てきたりと、後にも先にも、こんなアニメには出会ったことがない。そもそも、原始時代にお金があったのか(貨幣経済の展開はもっと後の時代では・・)。

 このアニメのエンディング曲が「やつらの足音のバラード」という歌だった(詞:園山俊二、曲:かまやつひろし)。「なんにもない なんにもない まったく なんにもない」という歌い出しがやたら耳に残り、歌の内容も壮大でどこか哲学的な趣があった。今振り返って、自分がどの教科よりも社会科が好きになり、社会科教員をめざすきっかけとなったアニメだったのかも知れない。(ちなみに、やつらとは「人間」のこと)

 令和の現代において、このようなアニメが子どもたちに受け入れられるかどうかは分からない。しかし、子どもの頃に見たアニメのシーンやエンディング曲を何十年たっても鮮明に思い出せる作品というのは、そう多くはないだろう。さて、皆さん一人一人の中にある、自分にとっての「名作アニメ」とは何だろうか。