人気作家・東野圭吾の作品にガリレオシリーズというのがある。一昔前、テレビや映画で見た人も多いと思う。天才物理学者・湯川学が、明晰な頭脳と卓越した論理的思考力で超難解な事件を解決していくというミステリーだ。当時、テレビドラマ「ガリレオ」(主演:福山雅治)は毎週高視聴率を稼ぎ、2008年にはシリーズ作品「容疑者Xの献身」が映画化された。

 「容疑者Xの献身」は直木賞受賞作でもあり、推理小説としてだけでなく、人間ドラマとしても読み応えのある作品だ。この作品が映画化されると早速劇場に足を運んだが、その時、(小説を読んでストーリーや結末はわかっていたのに)映画を見ながら涙を流した記憶がある。映画を見て感動することはあっても、涙することは滅多にない。最近、再び小説を読み返し、さらにDVDを借りて見直してみた。やはり涙があふれた。

 話の筋は、人生に絶望していた高校数学教師・石神哲哉が、アパートの隣に引っ越してきた花岡靖子とその娘・美里によって生きる希望を見いだすのだが、靖子(と美里)は復縁を迫る前夫・富樫慎二を殺してしまう。それを知った石神は愛する女性とその娘を守るため、完璧な隠蔽工作を行い、そのためにとてつもない犠牲を払う。その石神の犯罪トリックを大学の同期で友人でもあった湯川が暴くというものだ。石神の靖子に対する献身的で一途な愛(それは決して報われることのない愛)は涙なしでは見ていられなかった。

 映画の主人公は福山雅治が演じる湯川学だが、何と言っても石神を演じた俳優・堤真一の演技が秀逸だった。映画の終わりに流れた曲「最愛」(詞・曲:福山雅治 歌:KOH+)は、石神の生きざまそのものであり、究極ともいえる愛を表現した胸を締めつけられるような歌だった。大昔、「読んでから見るか、見てから読むか」という角川映画のコピーがあったが、「見てから(曲を)聴くか、聴いてから見るか」といっていいほど、この映画にマッチした曲なのだ。福山雅治のセルフカバーもある。ぜひ聴いてみてほしい。