本校・男子トイレの小便器の前に立つと、いつも目に入る小さなプレートがある。そこには「ようござった もう一歩前へ」と記されている。後から使う人やトイレ掃除をする人のために、十分配慮して用を足しましょうとの呼びかけだ(ちなみに「ようござった」とは、よくいらっしゃいましたという意味)。

 私はというと、「もう一歩前へ」という言葉のほうに反応してしまい、いつもある曲を思い浮かべてしまう。NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」の主題歌「Progress」(スガシカオ)である。この番組は、各界で活躍しているプロフェッショナルに密着し、その仕事ぶりを徹底的に掘り下げていくドキュメンタリーで、私は2006年放送開始以来の番組ファンなのだ(毎週火曜・夜10:30から放送中)。

 これまで番組で取り上げられた人物には、イチロー、高倉健、宇多田ヒカル、羽生善治などその道のプロと呼ばれる著名人も多いが、そうでない人もたくさんいる。世の中には、さまざまな仕事(職業)があり、それぞれの仕事にプロフェッショナルと称される人がいるのだ。そのような方々の仕事に向き合う姿勢やこだわり、ものの見方や考え方、信条としていることなどを教えてくれる貴重な番組なのである。

 そして、この番組に欠かせないのがProgressという曲だ。思うようにいかない自分、周りが自分よりよく見えてしまう自分は誰にでもある。人間誰しも理想の自分と現実の自分との間で葛藤しながら生きている。でも、「あと一歩だけ前に」進むことができたら、違った世界や新しい世界が見えてくるのかも知れない。そのためには、これまでの(現在の)カッコ悪い自分を(「ジブン」として)認めたうえで、一歩踏み出す勇気が必要なのだろう。